吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2023-01-01から1年間の記事一覧

音楽は自由にする

著者:坂本龍一 出版社:新潮社 坂本龍一が57才時点でそれまでの半生を振り返った自伝。 ミュージック・マガジン増刊号で高橋幸宏の特集を読んでいる最中に 坂本龍一が旅立ち、同誌の坂本龍一追悼増刊号を立て続けに読んだ後なので 本書を読まずにはいられな…

迷宮遊覧飛行

著者:山尾悠子出版社: 国書刊行会 少しづつ読んでいたので時間がかかってしまったが、何度でも再読できる内容の エッセイやら書評やら。 肩の力を抜いた文章もあれば影響を受けた作家さんたちへの 熱いオマージュが感じられる文章もあり、いずれも読んでい…

吹雪

著者:ウラジーミル・ソローキン翻訳:松下隆志 出版社:河出書房新社 酷暑が続く日々の中で読む極寒の風景は何とも不思議な感覚だった。 暑さを中和してくれることは無かったが。 時代背景がわかりにくいロシアが舞台。 馬車がでてくるので古い時代かと思い…

人間の土地

著者:サン=テグジュペリ翻訳:堀口大学出版社:新潮社(表紙:宮崎駿) 長い間積んでいたが、ようやく読んだ。 てっきり小説だと思っていたが、飛行機や関連技術が確立されていない時代に 路線パイロットとしての経験をもとに書かれたエッセイ。 言い回しや…

ミトロヒン文書 KGB(ソ連)・工作の近現代史

著者:山内智恵子監修:江崎道朗 出版社:ワニブックス KGBの文書管理をしていたミトロヒンが機密書類を長きに渡り書き写し イギリスに亡命、イギリスの諜報機関に提供した機密文書は膨大。 ソ連の対内外工作活動の具体的な方法や対象の広さには驚かされる。…

あの頃、忌野清志郎と -ボスと私の40年

著者:片岡たまき出版社:筑摩書房 読んでいる間、頭の中ではトランジスタラジオや僕の好きな先生やスローバラードが ランダムに流れていた。 RCの熱狂的ファンが事務所に就職し、衣装担当、マネージャーになり 身近で過ごすことができるなんて夢のようだ。 …

風配図 WIND ROSE

著者:皆川博子出版社:河出書房新社 12世紀のバルト海交易を舞台に描かれる二人の少女の物語。 交易商として生きようとする二人に立ちはだかる地域間の争いや 階級による人間関係などが描かれる。 途中、戯曲形式で書かれたりするので戸惑うが、 慣れると自…

地図と領土

著者:ミシェル・ウェルベック翻訳:野崎歓 出版社:筑摩書房 ウェルベック作品は「服従」、ラブクラフトの伝記かつデビュー作の 「H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って」に続いて3作目。 芸術家ジェド・マルタンの仕事に対するスタンス、家族や恋人との…

帝国図書館-近代日本の「知」の物語

著者:長尾宗典 出版社:中央公論新社 国立国会図書館は一度しか訪れたことがないが、 本書を知り、その歴史に興味が湧いたので読む。 帝国図書館から現在の国立国会図書館に変わったものと思っていたが 意外にも紆余曲折があったよう。 明治時代に前身施設…

リベンジ

著者:五十嵐貴久出版社: 幻冬舎 「リカ」シリーズ第八弾。 二作目の「リターン」の2年後ということで記憶があやふやだったが、 恋人を殺したリカに12発の銃弾を浴びせた青木孝子と生き残ったらしいリカの クロスリベンジやクズキャラ(佐藤)の顛末等々題…

口訳 古事記

著者:町田康出版社:講談社 知っているようで知らない古事記の世界を関西弁でがっつり楽しませてくれます。 町田康さん誇張しすぎだよ~と思いつつ調べてみると 案外忠実な内容だったことに「マジすか」連発。 日本の神様ってこんなに破天荒だったのか。 す…

イクサガミ 地

著者:今村翔吾 出版社:講談社 全三部作の第二作目は前作の「天」に続き「地」。 またまた我慢できずに読んでしまった。。。 詳しいことは書けないが愁二郎の兄弟たちの実力も明かされ、 更に新しい強者も登場し、デスゲーム「蠱毒」はいよいよ熾烈な展開に…

超圧縮地球生物全史

著者:ヘンリー・ジー翻訳:竹内薫出版社:ダイヤモンド社 地球で生命が誕生してから現在をも通り越して絶滅する未来までを盛り込んだ 意欲作である。 気候変化や隕石衝突、大陸移動など過酷な環境変化のなか、 種の大量絶滅を繰り返しつつ乗り越えてきた命…

異常【アノマリー】

著者:エルヴェ ル・テリエ翻訳:加藤かおり出版社:早川書房 一見繋がりが無さそうな登場人物たちの日常や仕事が語られるが、 徐々に不審人物の影がチラつき、不穏な気配を感じさせるように進む。 唯一の共通点として彼らは同じ飛行機に乗り合わせたことが…

祈りの海

著者:グレッグ・イーガン翻訳:山岸真 出版社:早川書房 奇想コレクションの「TAP」を読んで以来のイーガン。 長い間積んでいる間にすっかり色褪せてしまった。 時間をかけて読んでいたため記憶が既にあいまいだが、 ぼうっと読んでいると理解できなくなる…

ウナギが故郷に帰るとき

著者:パトリック・スヴェンソン翻訳:大沢章子出版社:新潮社 近頃ウナギを食していないなあ。 近所のウナギ専門の小さい店が無くなってからだから1年以上経つか。 気になっていた本作をようやく読む機会を得た。 アリストテレスやフロイトもウナギの研究を…

キーエンス解剖-最強企業のメカニズム

著者:西岡杏出版社:日経BP あまり身近に感じた会社ではないため、どんな会社か興味があったので読んだが、 営業をはじめとする仕事への取り組み方、顧客との接し方など、 いつの間にか忘れていた当たり前のことを当たり前に実行することの 大切さを思い出…

太陽が死んだ日

著者:閻連科出版社:河出書房新社 中国のある村で「夢遊」という病が伝染、拡大していく。 抑圧されていた欲望を隠すことなく行使していく人々の姿、 事態の顛末を少年の眼を通して描く。 最初から不穏な空気が流れる。 憂鬱な内容でありながら著者自身を登…

武器としてのエネルギー地政学-2030年、石油・ガス・脱炭素覇権の真実

著者:岩瀬昇出版社:ビジネス社 ロシア、ウクライナの戦争によってエネルギー資源が 政治的に利用される戦略物資であることがより明確になっているが、 本書では主要国の現状や思惑の概観を元三井物産の著者が解説している。 「シェール革命」、中国と日本…

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

著者:ジャック・ロンドン翻訳:柴田元幸出版社:白水社 積んでいるロンドンを差し置いて、またまた寄り道。 しかし、こんな成果のある寄り道なら何度でもしたいもの。 もっと早く本書を読んでいればよかったと後悔しています。 極めて厳しい自然の中をサバ…

赤死病

著者:ジャック・ロンドン翻訳:辻井栄滋出版社:白水社 図書館で本書の存在に気付きました。 積んでいる「ジョン・バーリーコーン」「マーティン・イーデン」 があるのですが 薄くてすぐ読めそうだから先に読むことに。 出版のタイミングが2020年。コロナ禍…

情報セキュリティの敗北史-脆弱性はどこから来たのか

著者:アンドリュー・スチュワート翻訳:小林啓倫出版社:白揚社 数多くの参考資料を丹念に辿り、黎明期から今に至る歴史と問題点を簡潔に 提示している。 コンピュータやネットワークの進化は当然セキュリティリスクの増加を 招くこととなる。 経済性や国家…

君のクイズ

著者:小川哲出版社:朝日新聞出版 クイズ番組の決勝で対戦相手が問題を読む寸前にボタンを押し、正解する。 負けたプレイヤーはヤラセを疑いながらも、正解を導き出す可能性があるのか?を 考察しながら真実を探る過程が描かれる。 昔から早押しクイズは観…

まず牛を球とします。

著者:柞刈湯葉(いすかり ゆば)出版社:河出書房新社 本書の中では「改暦」のみ既読。 表題作はてっきりコミカルなSFかと思っていたが普通に面白いし リアリティもあってなかなか良い。 単純化してモデリングするのはよくある手法だと思うが、それでもユニ…

俺が公園でペリカンにした話

著者:平山夢明出版社:光文社 コロナの影響か、「八月のクズ」を読んだ時はもう読まなくてもいいかなあという 気持ちが若干あった。 それなのに「ペリカン」に何を話したのだろう?と気になって読んでしまった。 短編集なので、しんどくなったら表題作を読…

天路の旅人

著者:沢木耕太郎出版社:新潮社 第二次大戦末期に密偵として蒙古人の修行僧に扮して 中国奥地、インド、ネパールなどを徒歩で渡り歩いた 西川一三の苦難の旅と人生を描くノンフィクション。 本書を読むまで全く知らない人物だったが何と魅力的な人だろう。 …

江戸一新

著者:門井慶喜出版社:中央公論新社 「家康、江戸を建てる」と同系列の話かと思ったがもう少し柔らかい内容だった。 「明暦の大火」後の江戸を復興するため、知恵伊豆こと老中・松平伊豆守信綱の 奔走が描かれる。 戦争ではなく、災害に強い都市「大江戸」…

ハヤブサ消防団

著者:池井戸潤出版社:集英社 ミステリ作家の三馬太郎は、父亡き後の実家に移住し消防団に勧誘される。 ハヤブサ地区での新しい生活の様子や人間関係がかなり長めに描かれているので ちょっと退屈だったが、連続する火事を調べると 次々と謎の事態に巻き込…

一睡の夢-家康と淀殿

著者:伊東潤出版社:幻冬舎 関が原を描いた「天下大乱」に続き、その後の大阪の陣までの 家康と淀殿(茶々)の戦いが描かれる。 立場は違えど静謐を求め、子供を案じる親の心情は共通するもの。 秀忠に盤石な体制を引き継がせようとする家康と、 豊臣家のプ…

朝日新聞政治部

著者:鮫島浩出版社:講談社 元朝日新聞の記者が実名を出しながら朝日新聞の実態を描いている。 「慰安婦報道」における虚偽、誤報とされた福島原発事故「吉田調書」、 「池上コラム掲載拒否」など、数々の失態は朝日の凋落を加速した。 社内政治に明け暮れ…