吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2022-01-01から1年間の記事一覧

孤剣の涯て

著者:木下昌輝出版社:文藝春秋 過去のいくつかの作品から連なるような構成っぽいが 徳川家康に呪いをかけた犯人を捜しだすよう依頼された宮本武蔵のイメージが 「敵の名は、宮本武蔵」からガラリと変わってしまい戸惑う。 戦国の世が急速に終末に向かう中…

2010年代SF傑作選2

編集:大森望/伴名練 出版社:早川書房 「2010年代SF傑作選1」はベテラン勢で、 第2弾は2010年代にデビューした人たちという括りとのこと。 既読は「スペース金融道」 と「従卒トム」の2作品のみ。 「従卒トム」はやっぱり面白いが、この傑作選では小田雅…

日本アニメ史-手塚治虫、宮崎駿、庵野秀明、新海誠らの100年

著者:津堅信之 出版社:中央公論新社 大正時代から現在に至る日本アニメの歴史が手軽に読める新書。 副題にあるように手塚治虫、宮崎駿、庵野秀明、新海誠など アニメ界にとって大きな影響を及ぼした人、及ぼしている人たちを取り上げ、 その役割の解説のみ…

すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集

著者:ルシア・ベルリン翻訳:岸本佐知子出版社:講談社 もともと前著「掃除婦のための手引き書」に収められなかった作品群が 今回の作品集となり、これで「掃除婦のための手引き書」は全てとの事。 前作同様、いずれも著者の経験が強く反映されている作品が…

2010年代SF傑作選1

編集:大森望/伴名練 出版社:早川書房 大森望、 伴名練が選ぶ2010年代のSF傑作選その1。 伴名練の作品「なめらかな世界と、その敵」が面白かったので 本当は伴名練の作品を読みたかったのだが寡作のため とりあえずアンソロジストとしての仕事を拝見する…

新しい世界の資源地図-エネルギー・気候変動・国家の衝突

著者:ダニエル・ヤーギン翻訳:黒輪篤嗣 出版社:東洋経済新報社 現在、世界中で起きている様々な問題を知るには大いに役立つ内容だった。 昔から本質的には変わらないが、資源をいかに確保するか、 この一点だけで戦争や紛争や確執が生まれるのだと改めて…

マイクロスパイ・アンサンブル

著者:伊坂幸太郎出版社:幻冬舎 猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」で配布された冊子に掲載された 短編を書籍化した連作集。 「オハラ☆ブレイク」に関しては知りませんでした。 最初は、伏線だとしても何か腑に落ちないなあと思いながら読んでいたが …

なめらかな世界と、その敵

著者:伴名練 (はんな れん)出版社:早川書房 初読みの作家さんだが、読み終わった後に二つのことを実施した。 まずこれは傑作選なのか?と確認したこと。違ったけど。 次に「ひかりより速く、ゆるやかに」をざっと読み返したこと。 気になることがあった…

AI監獄ウイグル

著者:ジェフリー・ケイン翻訳:濱野大道出版社:新潮社 世界情勢に関するニュースはウクライナ一色となっているが、 ウイグル問題も今でも継続している大きな問題である。 本書を読むまでここまでのことが起きているとは知らなかった。 欧米が声を上げてい…

かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖

著者:宮内悠介出版社:幻冬舎 明治時代末期。 若き芸術家たちがセーヌ川に見立てた隅田川河畔の料理店「第一やまと」に集い、 芸術を語り合うべく「牧神(パン)の会」を定期開催する。 その会合で様々な事件の話をメンバーが推理するという形式。 著者が明か…

残月記

著者:小田雅久仁 出版社:双葉社 「増大派に告ぐ」、「本にだって雄と雌があります」は読んでいるが 本作を含めそれぞれ印象が違い、著者のイメージが掴めない。 それだけ引き出しが多い作家さんなのかな。 月をモチーフにした3篇のダークファンタジー。 い…

幸村を討て

著者:今村翔吾出版社:中央公論新社 今村作品の長編は最後まで飽きさせない。本作然り。 早い段階で幸村が退場してしまい、こんな分厚い本なのに大丈夫か? と心配したものの、すっかり今村さんにやられました。 「幸村を討て」をキーワードに 真田幸村、信…

戦争は女の顔をしていない

著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ翻訳:三浦みどり出版社:岩波書店 「同志少女よ、敵を撃て」の参考文献だったので読んだ。 oldstylenewtype.hatenablog.com 対ドイツ戦に参加した女性たちの証言を集めた記録で、 多くの人たちの生の声が突き刺さ…

趙雲伝

著者:塚本靑史 出版社:河出書房新社 三国志をあまり知らない人でも趙雲の名はそこそこ有名だと思うが、 そんな人物を今題材にするということは、 それなりの切り口で成程そんな解釈があるのか、 な~んて唸りたいと思っていたのだが 特に目新しい展開は無…

幻の女 ―ミステリ短篇傑作選

著者:田中小実昌編集:日下三蔵出版社:筑摩書房 日下三蔵さんの名前で食指が動いた。 昭和感漂うというか、ド直球に戦後直後の空気感しかない作品ばかり。 新宿界隈の混沌とした雰囲気はまあわかる部分もあるが 聞いたことが無いスラングは読んでいるほう…

童の神

著者:今村翔吾出版社:角川春樹事務所 う~む。またまた面白い。 今村翔吾作品としては4冊目。平安時代の京都が舞台。 平安時代は苦手意識があるので今のところハズレが無い今村作品といえど 不安があったが、杞憂に終わりました。 京人に蔑まれ、山に暮ら…

信長、鉄砲で君臨する

著者:門井慶喜出版社:祥伝社 題名から期待していたが、織田信長よりも伝来した鉄砲に重心が置かれている。 伝来後、鉄砲がどのような位置を占め、どのような扱いだったか、 どのように時代を変えていったかが分かり易く描かれる。 そこに信長の有名なエピ…

辻政信の真実 失踪60年--伝説の作戦参謀の謎を追う

著者:前田啓介 出版社: 小学館 戦中の参謀として有名だが、評価が様々なのではっきりとした人物像をよく知らないため、厚めな新書を書店で見かけ、ちょうどいいかもと思い読んでみた。 炭焼きを生業とする家で生まれ、あまり恵まれた環境ではなかったもの…

だれかさんの悪夢

著者:星新一出版社:新潮社 今更ながらと言う勿れ。 「星新一の思想」を読んでから星新一を読みたくて 手近にあった作品の中から選んで再読。 oldstylenewtype.hatenablog.com 懐かしい思いと共に、とにかく短時間で読めるので嬉しい。 あまりにあっさりと…

とうもろこし倉の幽霊

著者:R・A・ラファティ編集/翻訳:井上央出版社:早川書房 昨年出た「町かどの穴」、「ファニーフィンガーズ」はほぼ再読だったが 本作はついに全9篇、初邦訳とのことで期待が高まる。 表題作を含め、様々な奇想が繰り出される。 読み易く感じる作品が多い…

イントゥ・ザ・プラネット

著者:ジル・ハイナース翻訳:村井理子 出版社:新潮社 洞窟探検家、写真家など様々な顔を持つ水中探検家としては 先駆的女性ダイバー、ジル・ハイナースのの自伝。 綺麗な海で魚たちと戯れながら大自然を楽しむダイビング、 人間の限界を超える深海に挑むダ…

イカはしゃべるし、空も飛ぶ 〈新装版〉

著者:奥谷喬司出版社:講談社 これだよこれ。こんなイカ本が読みたかった。 もっと早く読みたかったなあ。 「イカ4億年の生存戦略」と重複する情報もあるにはあるが、 明らかに知りたい情報、知らなかった多くの情報はここにあった。 1989年9月初版で、新装…

伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触

出版社 ‏ : 早川書房 「最初の接触」 マレイ・ラインスター「生存者」 ジョン・ウインダム「コモン・タイム」 ジェイムズ・ブリッシュ「キャプテンの娘」 フィリップ・ホセ・ファーマー「宇宙病院」 ジェイムズ・ホワイト「楽園への切符」 デーモン・ナイト…

イカ4億年の生存戦略

著者:ダナ・スターフ監修:和仁良二翻訳:日向やよい 出版社:‏エクスナレッジ 他のイカ本を読もうと思っていたら、本書が目についたので先に借りました。 頭足類の歴史を知るにはいいのですが、期待していたイカに関する話が少なくて アンモナイトとかオウ…

小説の惑星 オーシャンラズベリー篇

編集:伊坂幸太郎出版社:筑摩書房 永井龍男: 「電報」絲山秋子: 「恋愛雑用論」阿部和重: 「Geronimo-E, KIA」中島敦: 「悟浄歎異」島村洋子: 「KISS」横光利一: 「蠅」筒井康隆: 「最後の伝令」島田荘司: 「大根奇聞」大江健三郎: 「人間の羊」 …

同志少女よ、敵を撃て

著者:逢坂冬馬出版社:早川書房 アガサ・クリスティー賞は初めて読んだが、賞の名称と本作の内容の印象がだいぶ違った。 冒頭で、大木毅さんの「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」からの引用があり、題名から受けていた印象よりも硬派な作品かも、と思わせる。その後…

小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇

編集:伊坂幸太郎 出版社:筑摩書房 「小説の凄さ」を知りたいけれど、一体何から読めばいいのかわからない人を対象に伊坂幸太郎が好きな短編を集めたアンソロジー。とのことで読んでみた。 著者と作品は下記の通り。 眉村卓: 「賭けの天才」井伏鱒二: 「…

塞王の盾

著者:今村翔吾出版社:集英社 高い抑止力(石垣)で戦うことを諦めさせるか、圧倒的攻撃力(鉄砲)で戦いを 終わらせるか。 大津城を主舞台に、共に戦のない世を目指す職人たちの矜持と矛盾を描くストーリーは 最初から最後まで飽きさせない。 戦の最中にも…

星新一の思想

著者:浅羽 通明 出版社:筑摩書房 最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」とは違い、 あくまで作品を解析することで星新一を語るというアプローチで 最相作品と双璧を為す力作でした。 現代の技術的、社会的状況と作品の先見性を結び付ける点に関しては…