吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2020-01-01から1年間の記事一覧

竜二 ―映画に賭けた33歳の生涯

著者:生江有二出版社:幻冬舎 積読本から掘り出した。これも10年前くらいに古書店で手に入れたままになっていた。映画「竜二」はすっかり古い作品(1983年公開)だが、とても大好きな作品だった。その映画を制作し、主演した金子正次の評伝。何故今まで読ま…

闇の左手

著者:アーシュラ・K・ル=グウィン翻訳:小尾芙佐出版社:早川書房 「ヴィーナス・プラスX」に続いて読むジェンダーSF作品。有名作品ですね。ヒューゴー賞とネビュラ賞のダブル受賞とすこぶる評価が高い。事前に内容に関してはよく知らず、そのほうが楽しめ…

ヴィーナス・プラスX

著者:シオドア・スタージョン翻訳:大久保譲出版社:国書刊行会 積んでいた本の棚卸をゆっくりと行っているところです。「長英逃亡」に引き続き、本作も10年は積んでいたはず。心なしか肩が軽くなるようです。 そうそう、何と! 本日「アベノマスク」が届い…

逆ソクラテス

著者:伊坂幸太郎出版社:集英社 小学生の時の忘れていた同級生や先生や様々な情景を浮かべながら読んだ。 ぼんやり何も考えずに生きていた気がしていたが、 よく考えるととても小さな世界のなかで必死に生きていたんだなあ、 と思い直す。 今までメッセージ…

長英逃亡(上/下)

著者:吉村昭出版社:新潮社 閉じこもる日々に逃亡ものを読むのはきついかな?と思いつつ、こんな時期にこそ長編に挑むほうがいいかなと思い読む。実はこれ、10年以上積んでいた作品なので、読めてほっとしている。 (上) 江戸後期、日本を代表する蘭学者、…

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

著者:宮内悠介/冲方丁/法月綸太郎/山田正紀/梓崎優 /星野智幸/桜庭一樹/軒上泊/藤井太洋/日高トモキチ出版社:光文社 モリミーの「美女と竹林のアンソロジー」に続いて、宮内悠介が博奕をテーマに 作家さんたちにお願いした作品群を読む。 競馬や…

愛と髑髏と

著者:皆川博子出版社:KADOKAWA 初期短編集の復刊ということだが、毒性が強いうえにトンガリ具合が半端ない。 スタートの「風」からして表現力、発想力に圧倒される。 「人それぞれに噴火獣」や「舟唄」の心理描写は読んでいるほうにも 痛みを感じさせるか…

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

著者:森見登美彦/有栖川有栖/京極夏彦/恩田陸/佐藤哲也 /北野勇作/飴村行/矢部嵩/伊坂幸太郎/阿川せんり出版社:光文社 このアンソロジーのシリーズはすでに何作か出ているようだが、ようやく自分好みの作家さんたちの登場で初読みです。 森見登美…

息吹

著者:テッド・チャン翻訳:大森望出版社:早川書房 図書館で借りようと思っていたんですがコロナで休館しっぱなしなので購入しました。噂に違わず買って損のない作品でしたし、おかげでじっくり読めました。 第二短編集ですが、第一短編集の「あなたの人生…

侍女の物語

著者:マーガレット・アトウッド翻訳:斎藤英治出版社:早川書房 ギレアデ共和国で侍女として働く女性オブフレッドの物語。なぜこんな状況になっているのだろう?いつの時代想定なのだろう?と、疑問を持ちながら読み続けるが、理由がなかなかわからず、もど…

第10回 Twitter文学賞が発表された件(今更ですが)

Twitter文学賞が終了すると先日書きましたが、第一期が終了ということで第二期が続くようです。ありがたや。詳しい結果は下記サイトを見てください。 twitter-bungaku-award.theblog.me 今年は投票した作品が海外、国内共に第1位となり喜びもひとしお。今ま…

まむし三代記

著者:木下昌輝出版社:朝日新聞出版 いやあ、面白い!木下さんの代表作がまた一つ増えましたね。斎藤道三絡みでこれほど楽しめた作品はないかも。道三の下克上が一代で為されたものではないとの最新の説を基本としたためとても新鮮なうえに、ち密に構築され…

十二月の十日

著者:ジョージ・ソーンダーズ翻訳:岸本佐知子出版社:河出書房新社 状況が理解できず乗れなかったりする作品もあったが、岸本さんの翻訳がノリに乗っているのはわかる。各作品の登場人物たちは不器用すぎるというか共感しにくいというか、痛々しい。いたた…

ワン・モア・ヌーク

著者:藤井太洋出版社:新潮社 近未来のリアルを描くことが多い作家さんだが、これは2020/3/6~3/11という期間の話しなので、もう目前である。3.11を題材とする本書は東京に持ち込まれた原子爆弾を利用して政府にある要求を求める人物、その人物と同床異夢の…

小鳥たち

著者:山尾悠子人形:中川多理出版社:ステュディオ・パラボリカ 山尾悠子の紡ぐ幻想的な物語と、物語の中の侍女(小鳥たち)をイメージして中川多理が人形を創作し、さらに山尾悠子が続編を紡ぎ、またまた中川多理が人形を作る。 名前だけではぴんと来なか…

老乱

著者:久坂部羊出版社:朝日新聞出版 高齢化社会の先頭を走る日本にとって認知症の増加は避けて通れない。自分の母親もアルツハイマー型認知症が進行し、身内のこともわからず、話すこともできずに寝たきりとなっているため、この作品を無視できなかった。 …

ペニス

著者:津原泰水出版社:早川書房 津原作品を読み続けてきたが、この作品に限っては随分前から読むか読むまいか悩ましい存在だった。古書店でも見つけることはできなかったが、図書館にあることは知っていたので、その気になればいつでも借りられる。でも題名…

真鍋博の植物園と昆虫記

著者:真鍋博出版社:筑摩書房 星新一を愛読してきた人からすれば真鍋博や和田誠のイラストを思い浮かべながら懐かしい作品に思いを馳せる事でしょう。特に真鍋博に関しては特別ではなかろうか。星新一作品のイメージを補完しているのだが、実のところあまり…

「Twitter文学賞」終わるってよ

2020年2月9日いっぱいで「Twitter文学賞」が終了します。第1回こそ投票し損なったのですが、2回目以降は投票してきました。もう締め切り日が近いのですが、ご興味のある方は下記サイトを参照してから投票してみてはいかがでしょう。 ついでに自分は今まで何…

おちび

著者:エドワード・ケアリー翻訳:古屋美登里 出版社:東京創元社 「おちび」とあだ名されるマリー・グロショルツこと、のちのマダム・タッソーの人生が描かれる。主な舞台となるパリ、フランス革命前後の史実と重ね合わせマリーの境遇が過酷すぎる。芯の強…

銀河ヒッチハイク・ガイド

著者:ダグラス・アダムス翻訳:安原和見出版社:河出書房新社 傑作と謳われる作品は数多くあるが、この作品は大傑作と謳われている。傑作の基準はもちろん人によって違うものだが、その傑作本を読んでこなかった理由は読み始めてから思い出した。これ、シリ…

信長、天が誅する

著者:天野純希出版社:幻冬舎 信長の心理を描いた木下昌輝の「信長、天を堕とす」とセットの作品。信長に対する5人の心模様を描く。井伊直盛から見た桶狭間、お市の気持ちの変遷、長島一向一揆を指揮する下間頼旦、信玄亡き後の武田家を担う武田勝頼、そし…

毒牙 -義昭と光秀-

著者:吉川永青出版社:KADOKAWA 兵力をほぼ持たない名ばかりの将軍、足利義昭が織田信長の庇護を受けながらも結局対立し、言葉の持つ力で明智光秀や有力武将を利用して信長を追い詰めようと画策する。結局、光秀は義昭による長年の言葉の蓄積で本能寺へ向か…

リメンバー

著者:五十嵐貴久出版社:幻冬舎 リカシリーズ第5弾。心理感染ねえ。テレビニュースとかインターネットの情報を基に影響受けてるんだろうなあと思う事件等、確かに昔から感じたことが何度もあるしな。 それにしてもリカが遂に貞子のようになってきたのも時代…

信長、天を堕とす

著者:木下昌輝出版社:幻冬舎 自分は本当の恐怖を知っているのだろうか。強さとは何か。自問しながら生きる信長の心理描写にかなりのページが割かれる。折々の戦にこんな心持で向かっていたのかと思うと少し切ない気がするが、木下作品はやはり読ませてくれ…

恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ

著者:小林快次出版社:新潮社 慌ただしい年末年始に読むにはちょうどいい読み易さでした。 かなりの難所で地味で根気のいる作業をすることが自分に向いているかは別として恐竜を発掘して研究するという仕事は何となく憧れる。実際は大変なんだろうな、とい…