吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

好きな本

汝の父を敬え --ゲイ・タリーズ

数あるノンフィクションん中でもトップクラスで好きな作品です。読んでからずいぶんたちますが、色々と影響を受けたなあと思います。映画「ゴッドファーザー」のモデルとされるシチリア・マフィアであり、ニューヨークの五大ファミリーのひとつ、ボナンノ一…

午後の恐竜 --星新一

表題を含む11作品が収められています。表紙はヒサクニヒコ氏。実はこの作品の感想文を書くのはこれで2度目になります。一回目は中学生のときの夏休みの宿題。星新一の1ページにも満たない作品をピックアップして、それよりも長い感想文を書いてやるんだ、と…

わが赴くは蒼き大地 --田中光二

20代に長期入院したときの楽しみは本だけといっても良かった。これを機会に英語の勉強をしようと、オーソン・ウェルズに頼ってみたが挫折した(笑)。テレビも排除していたので、集中して沢山の本を読むことができたがすぐに問題が。読む本がない!!凄い勢い…

重力ピエロ --伊坂幸太郎

本作はは気持ちのいい状況設定ではないし、大きな仕掛けも派手さもない。雑学的な話しなど回りくどいといえば回りくどいし、気になるところもある。ただテーマは重いんだけど、いつもどおりの軽快な会話で楽しませてくれることは間違いない。このあたり、あ…

聖の青春 --大崎善生

子供の頃から重い病気を抱え、命懸けで将棋の世界で名人を目指しながら29才で亡くなった村山聖(さとし)という人の話です。将棋の知識はないのですが、村山聖の凄さは伝わってきました。また、彼らを取り巻く人たちの村山聖に対する愛情、思いやり、そして…

ラッシュライフ --伊坂幸太郎

デビュー作は確かに面白いのですが、ストーリーの重層性というか、連続性による騙しのテクニックに関して言えば伊坂作品の中では、本作が最高のできばえではないでしょうか。登場人物たちのストーリーは、他の登場人物のストーリーとリレーしながら伏線とな…

オーデュボンの祈り --伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の集大成の感想を書いたあとなので、原点回帰します。ご存知の通りこれがデビュー作です。数年前、独立したばかりで仕事に忙殺され、そのくせ金がまわらない時期が続いていた。本を買う余裕も時間もない。食べるのがやっとだった。本を読む時間が…

終末のフール --伊坂幸太郎

地球に隕石が落ちてくる3年前って設定はなかなか面白い設定だと思う。多分死ぬだろうと予感している人たちを描くわけだから、かなり動揺している人たちで溢れてそうなのに意外と落ち着いている。本来なら悪あがきしている人たちを書くほうが劇的で、まあよく…

テロルの決算 --沢木耕太郎

今久しぶりに本書を手にとって見て、こんなに薄かったっけ?と思ってしまいました。勿論ページ数はそれなりにあるのですが、印象としてはもっと厚い本だったような気がしていました。そんな錯覚をするくらい色々なものが詰め込まれた本だったんだなあ。1960…

宇宙からの帰還 --立花隆

ザ・ライト・スタッフは宇宙へ行くためのお話しですが、これは題名の通り地球に帰ってきてからのお話し。当時としては斬新な切り口だなって思いました。思いもよらないことばかりで素直に面白かったです。もう、ずいぶん古い話しになってしまったけど、未だ…

ザ・ライト・スタッフ --トム・ウルフ

今日見たニュースで「火星に微生物のような生命体が存在した可能性を示唆する発見をした」とNASAジェット推進研究所の研究チームが発表したらしい。こういうニュースを見るにつけ、宇宙に関する本や、映画を思い出す。あれも見たい、これも読み直したい…

世に棲む日日(1-4) --司馬遼太郎

「花神」をきっかけに好きになった高杉晋作を決定的に好きになったのは本作のおかげです。4巻セットですがあっという間に読み終わった記憶があります。幕末にはキラ星のごとく魅力的な人物が現れますが、私にとってこの人以上のヒーローはいません。吉田松陰…

仕掛け花火 --江坂遊

正直なところ不覚にも最相葉月の著書「星新一 一〇〇一話をつくった人」を読むまで名前すら知りませんでした。以下、Wikiより引用>星新一の唯一の弟子であり、長女の星子(せいこ)、長男の新(あらた)は彼の名前から取られている。星新一に弟子がいたなん…

博士の愛した数式 --小川洋子

きれいにまとまった、いい作品ですね。これ。理系が苦手だったけど関係なく読めました。数字に隠された意味を道具にコミュニケーションをとろうとする博士と家政婦の息子「ルート」の関係は微笑ましい。博士に影響を受け、少しづつ数字で遊びだすことで徐々…

砂漠 --伊坂幸太郎

以前書いた「アヒルと鴨のコインロッカー」でも触れましたが、伊坂幸太郎については作品に甲乙つけるのが難しい。まず表紙のせいで読むのは当分あとでいいやと思ってましたが、発売と同時に読むべきだったと思った。表紙は大事だけど、あんまり気にすると損…

昭和16年夏の敗戦 --猪瀬直樹

猪瀬直樹といえばミカドの肖像、天皇の影法師や土地の神話、いずれも印象的で興味深い著書ばかりですが、それらを抑えて個人的に一番衝撃を受けたのがこの「昭和16年夏の敗戦」です。かつて日本は第二次世界大戦で滅茶苦茶になった。なぜ戦争をしたのか。各…

夜のピクニック --恩田陸

ここのところ多忙な日々が続いている。ゆっくり考える時間が欲しいというのは贅沢な望みなのでしょうかね~。とにかく動きながら考えるしかない。まあ、そのほうがいい考えが浮かぶってことも事実なわけで。そういえば学生のころから大事なことを考えるとき…

海辺―生命のふるさと --レイチェル・カーソン

毎年行く岩場でのスノーケリングは、行く度に新しい発見で飽きることがない。名前もわからない小魚の大群に囲まれたり、砂粒のような稚魚の大群が眼前にいたり。そういえば海草の切れ端が2本、同じ方向に同じスピードで移動しているから不思議に思ってじっと…

スローカーブを、もう一球 --山際淳司

「江夏の21球」をご存知の方はある程度の年齢になっていると思いますが、この本に入っています。是非、今の若い人にも読んでほしい本です。熱い戦いを語っているはずなのに、山際淳司の目を通すとそれだけで、その場面にある静謐さを感じます。そのクール…

花神 --司馬遼太郎

司馬遼太郎の最初読んだ作品が、「花神」です。主人公は司馬作品のなかでもとても地味な部類にはいる村田蔵六、のちの大村益次郎です。確か中学生の頃だったと思いますがNHKの大河ドラマで放送されるとのことで、事前に読み始めた記憶があります。大河ドラマ…

われらをめぐる海 --レイチェル・カーソン

海に関して興味があって、何かの折に彼女の名前を知り、数件の本屋さんを探して見つけました。「沈黙の春」のほうが有名ですが、彼女はれっきとした海洋生物学者です。学者の著書なので専門用語が結構出てきますが、表現力が豊かで素人にもとてもわかりやす…

目撃者-近藤紘一全軌跡1971~1986 --近藤紘一

近藤紘一さんは、残念ながらずいぶん前に若くして亡くなられているのですが、特派員として生きていた時、奥様の自殺をきっかけにベトナムという戦場を駆け巡るようになり、ベトナムの歴史を目に刻みながらベトナムで生活した人です。この本は一周忌に出版さ…

最後の共和国 --石川達三

第1回の芥川賞は、石川達三が「蒼茫」で受賞している。「社会派」と言われるだけあって多くの問題作を世に出している。「風にそよぐ葦」「生きている兵隊」「人間の壁」なども読んだ。確かにこれらは評価の高い作品なのだろう。が、読んだのが高校生の頃から…

砂の女 --安部公房

この本に出会ったのは高校生時代だったが、読みやすく、面白かった。おかげで安部公房にはまってしまったが、いずれの作品も不思議ワールド全開という感じである。砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂砂…

空白の天気図 --柳田邦男

ノンフィクションを読むようになったのは、柳田邦男がきっかけだった。小学生のとき、パイロットになりたいと漠然と考えていたせいか、中学生になっても航空機の雑誌などを定期的に読んでいた。その雑誌中に、世界で起きていた航空事故の概要が載っているコ…

コインロッカーベイビーズ --村上龍

正直なところ村上龍の作品は、ほとんど読んでいると思うが、期待はずれのもののほうが多い。「限りなく透明に近いブルー」はドラッグで見る妄想みたいなものだし、グロい。吐き気がする本は初めてだった。「海の向こうで戦争が始まる」は抽象的なイメージが…

たった一人の反乱 --丸谷才一

「ボートの三人男―犬は勘定に入れません」(ジェローム・K・ジェローム)へオマージュを捧げている「犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」(コニー・ウィリス)を2年前くらいに読んだ。「ボートの三人男」は読んでいないので、機…

ボッコちゃん --星新一

星新一の発想力は並大抵なものではない。登場人物の特徴や情報を徹底的にシンプルにすることで今でも古さを感じさせない。そして、現在の社会にそのままあてはまる風刺、ブラックユーモアが満載である。星新一の自選短編集の「ボッコちゃん」はその中でもダ…

ベルカ、吠えないのか? --古川日出男

何だか面白い本を読んでしまった。こんな読後感でした。不思議な語りかけ風な文体は最初違和感があったが、それが効果をかもし出しているのでしょう。慣れればむしろ、その潔さが気持ちいい。感情移入がほとんどなく、さばさばと進んでいる感じとかもよし。…

広島に原爆を落とす日 --つかこうへい

つかこうへいの描く、ひねくれた、不器用な愛情物語はとても好きです。熱海殺人事件、飛龍伝、蒲田行進曲、寝取られ宗介、幕末純情伝、長島茂雄殺人事件・・・どれもこれも愛すべき人物がとんでもない愛情を振りまいています。その中で、ある意味究極の愛情…